ミスコン 【後編】

 


■ ミスコン(後編) 2003/2/1(Sat)



その朝いつもより早く目が覚めてしまった私は


ダンスに必要なもの一式がバッグの中に入っているかもう一度確認した。


そして星占いの切り取りページをお守りがわりに入れた。




『射手座の今年の運勢は12年に1度めぐってくる幸運な年。


何をやっても成功するでしょう。大きなことに挑戦してみましょう。』




そう書かれた紙切れを私はもう一度見つめた。




私服を持参するよう言われたが面倒だから着ていっちゃえと思い



少しでもスリムに見える黒いパンツと黒白のニットのシャツを着て出かけた。




都心のビルの中の一室。



第四次審査会場には30人ほどの女子とマネージャーらしき男の人達がウロウロしていた。




女の子達はみなそれぞれ可愛く綺麗で自信に満ち溢れているように見えた。



一人きりで荷物をかかえてイスに座った私は既に彼女たちに圧倒されていた。





しばらくすると某テレビ局らしき人たち数名がカメラをかかえて部屋の中に入ってきた。




占いの特集でこのコンテストの模様を放送するらしい。





手相、星座、姓名判断 の3人の占い師の先生たちが来ていて



順番に私たちは呼ばれ見てもらうことになった。





私の両手をしげしげと見つめた60歳くらいの中年女性は



手のひらと顔を交互に見ながらうなずくだけで何も言わなかった。




占いの結果はテレビ番組で流れることになるから


今は私達に教えてくれるつもりはないのだ。と知った。




星占いの運勢は最高なはずだ。


どの雑誌を見ても今年は大幸運の年ということなのだから。


だが手相と姓名判断はどうなのだろう・・・





そこにいた女子全員の占いが終わった頃、係りの人が入ってきた。




「ではこれから面接がありますので水着に着替えて呼ばれたらあちらのドアから入ってくださ~い」




彼女達のマネージャーらしき人達が出て行った後、全員いっせいに水着に着替え始めた。



うわぁ・・細い!皆ものすごく痩せている。それにすごいハイレグの水着だぁ・・



私の水着は藤色のグラデーションに黒のラインがはいっているハイレグではない



ごく普通の地味な水着だった。





では21番の方こちらへ。




ドアを開けるとそこには中年の男性数人と女性が一人テーブルの向こう側に座っていた。



「どうぞ、座ってください」




「はい」  




  水着で面談・・かなり恥ずかしい。



「歯並びいいですね。本当の歯ですか?」




「は?」    



別にシャレを言ったわけではない。



「えぇと、だから、歯は いじってないのかな?」



「自分の歯です。歯並びはいいのでそれがチャームポイントです」




チャームポイントは歯ってことでいいわ!と今決めた。




「優勝したら水着でポスターの撮影などありますが、



もしもだけど上半身だけとか脱ぐことは可能ですか?」




ぬ、脱ぐぅ~?



ひぇ~・・・もう両親の前でも脱がない年頃なのに



人前で脱げというのか?



と心の中では思っていたが





「えぇ。どうしてもというなら・・・」





 などと偉そうに答えていた。




親は絶対にダメと言うだろう。と思ってはいたが



ここで脱げません!といったら受からないのかなぁと安易に思ったので




「できたら胸の先とかは見えないように花とか手とかでかくしたいのですが」




などとアホなことまで言っていた。




グラビアのポスターに自分が上半身ヌードで胸の先に貝殻をつけてポーズしている


マヌケな絵が想像できてしまい、


貝はヤダな、ハイビスカスの花とかの方がまだいいかも。



などと余計な空想をいっぱいしてしまった。






それからいくつか色々な質問をされたはずなのだが



今思い出そうと思ってもどうしても思い浮かんでこない。




胸の先に貝かも・・・



そればかりが頭に不安となって残り他の質問は全て忘れてしまったらしい・・・・





「では結果は後日ご連絡します。どうもお疲れ様でした」




結局私服は見せる機会はなかった。



洋服、着てきちゃって荷物にならずに済んでまぁ良かったか・・・



ジャズダンス・・・披露してないし・・・




後でわかったのだが、


もしも「最終選考」に残った場合には、特技を披露することになるので準備しておいて



それに必要なものなどあるなら今から一応用意しておいてください。




と向こうは、そう言ったらしかった。





そして10日後くらいの夜に家に連絡がきた。





その日私はフィルム売りのアルバイトに出かけていて家にいなかった。




電話を受けた母がバイト先まで電話してきた。




「ちょ、ちょっと、あなた何したの?!



お嬢さんが第四次審査、通りましたので最終選考会にいらしてくださるようお伝えください。って、



なんか電話きたわよ!なんか出したの!?」




と、かなりびっくりしている様子だった。




今まで何かするときには必ず母に相談してから行動していた私だったので



自分ひとりで決めて黙ってそのコンテストに応募したことを今初めて知った母は


すごく驚いたようだった。





母の声は興奮していたが怒っている様子ではなかった。




本選まであと2週間。



せっかくここまできたのだからがんばろう!と思った私はダイエットしよう!





と思ったが思っただけで またしてもしなかった・・・




よく食べよく眠り当日踊るであろうダンスの練習もしたりして



あっという間に2週間が過ぎた。





第三次審査のときと変わらず健康体のままで最終選考会場へ向かっていった。






もしかして・・もしかしちゃうかぁ~!?ぎゃはははぁ~?!





と、うかれた私の頭の中では




ハイビスカスの花がヒラヒラと舞っていた。





後々雑誌で知ったのだが




その年のこのコンテストへの応募総数約6500名。




最終選考に残ったのは19名だった。




宝くじを買ってたら当ってたかも^^






                  オチはまだです次回へ続く~w >^)))彡